2022.6.2

第1回ワークショップ+展示会

「暮らしの彫刻」オンラインワークショップ+展覧会 開催レポート

 ラッコルタ -創造素材ラボ- は、NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)が、府中市や東京都の自治体と協働しながら、アートと社会をつなぐプロジェクトとして始動しました。地元企業に端材や部材を提供していただき、創造表現の素材として新たに活かす仕組みづくりです。

 アーティスト主導のワークショップを実施し、おとなや子どもが素材から発想する表現活動に取り組みます。身近にあるモノを違う視点から捉える機会を創出し、アーティストの視点を通して、新たなものの見方を獲得するラーニングと位置付けています。

 今年度は、地域企業・場所・人・メディアが連帯し合う仕組みを構築し、地域企業の創造素材の洗い出しと提供交渉、ワークショップの企画立案・実施、報告としての成果展を行いました。令和3-4年度市民提案型協働事業として府中市の文化生涯学習課と協働し、また「東京アートポイント計画」の一環で公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京と東京都と共催しています。

 当事業の初めてのワークショップとして、美術家の三木麻郁さんを迎え、株式会社TOKIO Labご提供の梱包材を使った「暮らしの彫刻」が開催されました。12月5日(日)にオンラインワークショップ、12月6日(月)から19日(日)までとりときハウスギャラリーで成果展が行われました。

 コロナ禍を考慮し、オンラインで開催されたワークショップには、おとなから子どもまで18組(午前・午後 各回9組)、約30人の方が、地元府中市のみならず、秋田県や愛媛県の遠方からも参加されました。講師の三木麻郁さんは、「変換する」ことから制作活動を始め、「いつも見ている景色を捉えなおす」試みを続けているアーティスト。三木さんと一緒に、梱包材という創造素材を使って、それぞれ自宅に関連する場所で「暮らしの彫刻」をつくります。参加者はオンラインで交流しながら、ダンボールパーツをDNAのように思い思いにつなげて、自分だけのカタチを立ち上げます。それを生活空間のどこかに組み入れて、参加者それぞれの体験や発見を共有していきます。

 午前の回は、おとなの参加者が多く、都外遠方からの3名は偶然にも小学校教師でした。一方、午後の回は大部分が親子参加で、幼児や小学生が保護者と机を共にしながら表現に取り組みました。特に「何をつくる」という具体的な指示はなく、素材を触れたときの直観に任せて、子どももおとなも黙々と手を動かしていきます。

 手元にカメラを向け、各自が思い思いにつなげたり削ぎ落としたりする様子をZoomで確認しながら、三木さん自身も一緒に素材に身を任せます。各自のペースを保ちつつ約30分間でカタチの目処を立てます。

 続いて15分ほどの間に、それぞれの生活空間に、カタチの居場所を見つけて設置。日常の風景を改めて見つめ直し、いつもと少しだけ違った景色を見出したら「暮らしの彫刻」の完成です。参加者は、順番にオンラインでプレゼンテーションを行い、お互いに観賞し合いました。プライベートの空間に組み込まれたカタチを披露しながら、制作の経緯や意図、感想を言葉で伝えます。

 子どもたちは、素材に触って、素直に作りたいものをカタチにしていった結果、架空の生き物や、装飾物になり、それを家の好きな場所に置く、というケースが見られました。子どもの造形ワークショップを数多く行っている講師の三木さんと言葉を交わしながら、少しずつ心を開いていく様子が伝わります。一方、おとなは、毎日暮らす場所を見つめ直し、そこに置きたいモノや、家の隅々に宿るストーリーを象徴するカタチを立ち上げていました。その中のいくつかを紹介します。

 上の左の作品は、50代の女性の作品。「素材を組み合わせていると、どんなに支柱に巻き付けても、陽のさす方を目指し自由に伸びていくアサガオのつるが重なりました。家の中で一番陽がさす階段途中の窓に飾りました。」とのことで、2階にある子供部屋へ上り下りしてきた3人の息子さん達の成長を象徴するかのような作品になりました。また、右の作品は、「廃材を組み合わせて何か建ててみようと考えていたのですが、倒れてぐちゃぐちゃになってしまいました。この状態を、家中で最もカオスな夫の書斎と組み合わせてみました。」という女性の作品。フォーカスされた場と設置されたカタチの相乗効果により、暮らしのストーリーが浮かび上がります。

 ワークショップの後は、それぞれの居場所を見つけたカタチを各自が撮影しメールで送付、翌日からの展覧会で発表しました。

誰でも参加可能な“変化し続ける”成果展

 12月6日(月)より、前日のワークショップ配信会場と同じとりときハウスギャラリーにて、成果を紹介する展覧会が開催されました。とりときハウスは「ふんわりとつながりあう暮らし」をコンセプトにした府中市にあるコミュニティマンションです。 DIY スペースを併設し、自分らしい暮らしを応援する当地の1F ギャラリースペースを使用しました。こちらの住人の方も、今回のワークショップに参加しています。午前と午後の2回に分けて行われたオンラインワークショップでは、全員の制作過程を追うために参加人数に制限がありました。一方、リアルな展覧会では、来場者の誰もが素材に触って試すことができ、また持ち帰って「暮らしの彫刻」を撮影してメールで送ってもらい、作品として出展参加することもできます。このように来場者やACF会員の作品も徐々に加わり、2週間に渡って”変化し続ける”展示を試みました。

 家の中の写真を撮るという行為は、三木さんが「diary」としてinstagramで紹介し続けている作品にもつながります。「コロナウィルス感染拡大により、圧倒的に家で過ごす時間が増えたことから、家の内側にいても、いつも見ている景色を捉えなおす試みができることに気がつきました。 家は住まう人々によって作られるものです。昨日と今日とではあまり変わらないようですが、細部は状況によって刻一刻と変化しています。その中で、ハッとする美しさや愛おしさを感じる瞬間は、一瞬でした。私はそうした出会いを、扱いに少し手間取るデジタル一眼レフを使って、写真に収め続けています。さらに、生活空間と制作空間を共有しているという暮らし方も、家を撮影するというアイデアは自然の流れでした。」と三木さん。

 入口付近には、三木さんのコンセプトや作品「diary」等の制作活動、また素材提供企業である(株)TOKIO Labの業務内容をビデオで紹介。同時に今年度、地元企業から集まった創造素材も配置。

 また、今回のワークショップの根底にあるアーティストの視点を紹介するために、三木さんの近作も展示しました。左下の「Mathematics」は、数学書から数式を細く切り取り、数式の意味に従って立体に組み直した作品で、虫眼鏡や歯鏡を通して鑑賞します。数学の問いを解く工程の式の「分解と再構築」の営みが、今回のワークショップの所作に通じます。右下の「誕生の讃歌」は、生まれた瞬間の星空をオルゴールで奏でる作品。文学、数学、天文学、音楽などの領域を行き来しながら、既存の規則ルールを少し変化させ別の装置を使って再現しています。固定観念からほんの少し脱輪させることで見える風景によって、私たちが見慣れてしまった世界の俯瞰を試みているそうです。

 会場中心の大きなテーブル上には、来場者が自由に素材に触れて体験できるスペースを設置。つなげて増殖し変化を続ける参加型彫刻として、最終日にはテーブルの上から空中に向かって伸びる、大きな作品に成長しました。壁面の写真に伴って、常に発展し続ける2週間の展示となりました。

 ワークショップ参加者、提供企業のTOKIO Labの方々、府中市役所や東京都関係者、とりときハウス内にあるカフェから偶然のお客様が訪れたり、約100人の来場者がありました。写真作品は、ラッコルタの公式instagramでも紹介しており、それぞれのタイトルやコメントも見ることができます。オンラインとオフラインを混合させ、場にとらわれない多様な交流が実現しました。

ラッコルタ公式インスタグラム:https://www.instagram.com/raccolta_acf/

「暮らしの彫刻」企画をふりかえってにつづく

「暮らしの彫刻」オンラインワークショップ情報

日時|2021年12月5日(日) 午前の部 (10:00 – 12:00) 、午後の部 (14:00 – 16:00)

場所|オンライン ※Zoom

講師・アーティスト|三木麻郁(美術家)

対象|どなたでも参加いただけます

参加費|無料

参加人数|32名

「暮らしの彫刻」成果展情報

日時|2021年12月6日(月)〜12月19日(日) 11:00 – 17:00

場所|とりときハウス ギャラリー(東京都府中市宮西町4丁目13番地の4)

参加人数|のべ100名

主催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、NPO 法人 アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)

※本プログラムは、令和3-4 年度市民提案型協働事業として、府中市の文化生涯学習課と協働しています。

協力|株式会社TOKIO Lab 玉川石材工業株式会社 日本光具株式会社 一般社団法人まちづくり府中、株式会社F.F.P

*写真撮影:清田大介、深澤明子

本プロジェクトは「東京アートポイント計画」の一環として実施しています。