チャーム・ケア × ACF「未来の記憶」プロジェクト 第二期スタート!
アートを通じて人と人をつなぎ、記憶を未来へとつなぐ――。
NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(以下、ACF)は、介護付有料老人ホームを運営する株式会社チャーム・ケア・コーポレーション(以下、チャーム・ケア)と連携し、「未来の記憶」をテーマとしたプロジェクトを2024年秋より開始しました。
この取り組みは、超高齢のご入居者の五感を使ったレクリエーションプログラムを通して、アートを介したコミュニケーションの可能性を探る試みです。
ホームのご入居者の「個性」を引き出し、「その人らしさ」を大切にした企画により、本人のみならず、介護スタッフやご家族を含めた他者も、発見を積み重ねるような事業を目指しています。五感の刺激によって「思い出」の引き出しを開け、カタチや言葉へ紡ぐことにより、他者へ伝える効果を検証していきます。それぞれの記憶を、他者を通じて「未来の記憶」へつなげていきます。
今年9月から始まった第二期では、都心部を中心に展開するチャーム・ケアのホームのうち、20施設を訪問予定です。実施企画は以下の「ラッコルタ -創造素材ラボ-」ワークショップおよび「昭和の8mmフィルム上映会」を主軸に、音楽および植物を使ったワークショップも展開予定です。
本記事では、主軸となる2つの企画を紹介した上で、第一期の学びについて振り返ります。
最後に第二期の新しい試みについてもご紹介します。
「未来の記憶」プロジェクト 2つのメイン企画
■ ラッコルタ –創造素材ラボ– ワークショップ
「私のお気に入り 〜みる・ふれる・おもう・記憶と対話〜」
ACFが運営する「ラッコルタ –創造素材ラボ–」は、地域企業から提供された不要な部材を“創造素材”として再活用する仕組みです。
本プロジェクトでは、これらの素材をテーブルに並べ、ご入居者が自由に手に取り、質感や色合いを楽しみながら小箱に詰めたり、お皿に盛りつけるワークショップを行っています。制作の合間には、スタッフが素材から想起される思い出を丁寧に伺い、その語られるエピソードの豊かさに毎回新たな発見があります。今まで知らなかったご入居者の一面や、過去の体験を知る驚きがあったと介護スタッフからも評価を得ています。完成した作品はその場で写真に撮影し、ミニフレームに入れてお渡しすることで、お部屋でご家族と一緒に眺めながら、語らいのきっかけとしても楽しんでいただいています。
最初は戸惑っていたり、手を伸ばすのが難しかった方々も、多様な素材に触れることで徐々に心を開き、その人らしさを発揮した作品に仕上げているのが毎回とても印象的です。
この活動を通じて、ご入居者やスタッフをはじめ、参加者同士の会話が広がり、作品を見せ合いながら交流を楽しむ姿が見られました。施設内外の豊かな異世代コミュニケーションが生まれる貴重な時間となっています。



■ 昭和の8mmフィルム鑑賞会
「懐かしい暮らしの映像」
ACFが別事業として行う「ホームムービーの日 in 東京府中」では、地域の家庭に残る8mmフィルムを上映し、個人の思い出を地域の記憶として保存・継承する活動を続けています。
「未来の記憶」プロジェクトでは、ご入居者とともに昭和30〜50年代のホームムービーを鑑賞。七五三、運動会、お祭り、お正月、家族のだんらん――懐かしい映像がスクリーンに映し出されるたびに、皆様の表情には笑顔と驚きがあふれます。
ACFスタッフによる時代背景の解説を交えながら映像を鑑賞するなかで、ご入居者様にも思い出をお伺いします。皆さんが語るエピソードの数々は、まるで昨日の出来事のように鮮明で、 その人生の深さに温かな感動を覚えます。
フィルムに記録された個人の行事や慣習は、時代性や地域性を映し出し、それぞれ自分の思い出と比べたり懐かしんだり、記憶を刺激します。
また、鑑賞前後には当時の8mm映写機などの実物にも触れていただき、触感を通して記憶を辿る体験を行っています。記録媒体も大きく変遷した1世紀を共有してきたご入居者に、現代では貴重となったフィルムの手触りを感じていただきます。


第一期での学び
本プロジェクトの主旨は、各ホームのご入居者がアートを介したコミュニケーションにより、精神的な豊かさと生活の質を高めることにあります。
子育て世代が多いACFスタッフにとって、高齢者施設での取り組みは初めての試みでした。これまで府中という地域でアートを通して培ってきた多様な経験を活かしつつ、それぞれが試行錯誤を重ねました。
訪問したのは多摩地域を中心とした6か所のホームを各2回ずつ。上記の「ラッコルタ」「8mmフィルム上映」を主軸に、音楽レクリエーションを数回交えた内容となりました。音楽会では、童謡や旅の「記憶」にフォーカスし、「音」がもたらすエネルギーにより、多くの参加者を巻き込むことができました。ピアニストの黒田京子さんと歌手の小林貴子さんの「旅の記憶」で世界を巡るコミュニケーションでは、会場全体が熱気に包まれ、音楽が心身に与える大きな力を実感しました。歌手の小川希さんの会では、記憶を共有する童謡という歌、そして透き通る声を通した身体と音によるコミュニケーションが感動をもたらしました。
私たちは、チャーム・ケアのご入居者、スタッフ、ご家族の皆様が抱える課題は何か、そしてアートを通じたコミュニケーションが、どのようにその課題に寄り添えるのか――。
簡単ではない問いを自らに課しながら、ひとつひとつの現場と真摯に向き合ってきました。チャーム・ケア本部のアート部門ご担当者の皆様とは、数値化の難しいコンセプトながら、共に思考し、アイデアを出し合いながらプロジェクトを構築してきました。
また、介護が必要な年齢に近づいている親を持つスタッフにとっても、チャーム・ケアの施設を訪問することは、自らの家族を見つめ直す機会でもありました。そのため、ホーム内を、自分や家族がお世話になるかもしれない場として拝見する好機にもなりました。
興味深いのは、ホームごとに雰囲気が異なり、ご入居者のタイプも多様であることです。
ご出身地やお身体の症状、ホームの規模やレイアウトなど、さまざまな要素が複合的に重なり合って、それぞれの環境が形づくられています。
今回のプロジェクトの目的でもある「コミュニケーション」は、施設内にとどまらず、外の新たな人々との緩やかなつながりを生み出しました。チャーム・ケアの新卒採用のインターンプログラムに採り入れていただき、ワークショップのスタッフとして参加して頂くことで異世代交流が実現しました。お孫さん位の年齢差の方々とご入居者との対話は、自然と笑みがこぼれるような穏やかな時間でした。多世代からなる私たちACFやチャーム・ケアの担当スタッフも、毎回ご入居者の声に耳を傾け、それぞれの個性を見出すよう努めています。
例えば、ご入居者の出身地をお伺いすると、周辺地域の方もいれば、ご家族に近隣のホームとして遠方から入居された方も。おひとりおひとりの人生の歴史から地域の記憶が垣間見え、日本の現代社会について想いを馳せるプロジェクトにもなっています。
どのホームも清潔で明るい空間の中で、豊かな人生を経験してきたご入居者を中心に、愛情をもって繊細なケアに取り組むスタッフの皆様がいらっしゃり、チャーム・ケアのサービスの質の高さを身近で感じることができました。

第二期へ ― 探求は続く
「未来の記憶」プロジェクト第二期では、第一期で実施した活動の継続に加え、新たなプログラムも展開していきます。
五感を使ったアート × コミュニケーション
今年度の「未来の記憶」プロジェクトでは、主軸の上記2企画に加え、音楽や植物との触れ合いなど、感覚的な体験を重視した新たなアートプログラムも実施予定です。
音楽を通じた身体を使うレクリエーションでは、リズムに合わせて手や体を動かしたり、自ら音を奏でたり声を出しながら、心身の活性化を促す参加型のセッションを計画しています。音によって想起される「記憶」を重視し、ご入居者がそこに居るだけで楽しんでいただける場を目指します。
また、香り高いハーブなどの植物を用いたレクリエーションでは、なかなか触れる機会の少ない草花を束ねたり、香りを楽しみながら、ご入居者様の心や記憶に寄り添うひとときを創出します。
「未来の記憶」プロジェクトは、五感を通じたアートによって人と人をつなぎ、記憶を未来へとつなぐことを目指して、今後もさらなる探求を続けてまいります。

チャーム・ケア × ACF「未来の記憶」プロジェクト 概要
第一期
実施ホーム一覧
- 3/18 8mm上映(チャームプレミア浜田山)
- 4/8 音楽ライブ (チャームスイート石神井公園)
- 4/10 8mm上映(チャームスイート経堂)
- 4/15 ラッコルタ(チャームプレミア浜田山)
- 4/29 音楽ライブ(チャームスイート調布)
- 5/13 8mm上映(チャームスイート京王聖蹟桜ヶ丘)
- 5/20 ラッコルタ(チャームスイート調布)
- 5/27 8mm上映(チャームスイート石神井公園)
- 6/3 音楽ライブ(チャーム府中番場)
- 6/10 ラッコルタ(チャームスイート京王聖蹟桜ヶ丘)
- 6/16 8mm上映(チャームスイート調布)
- 6/24 ラッコルタ(チャームスイート石神井公園)
第二期
実施期間 2025年9月~2026年6月
実施場所 都内各ホーム20か所(予定)
主催 株式会社チャーム・ケア・コーポレーション、
NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)
執筆:ACF 馬渕愛, 宮山香里