2022.11.22

[事例4] 愛媛県西条市立丹原小学校1年生オンラインワークショップ 「きもちのおきば」

(ACF理事, BLANCO主宰 宮山 香里)

多様化する社会の中で、障害の有無、国籍や年齢の違いを越えたコミュニケーションを生む場を目的に、私たち BLANCO(ボッフェッリと宮山の美術家)は、さまざまな地でアートワークショップを実行してきました。2022年2月後半、長年ワークショップにより関係を築いてきた愛媛県西条市の小学校教師と協力し、TOKIO Labの廃材を使用したオンラインの取組みを行いました。小学校1年生2クラス合計38名を対象にした「きもちのおきば」をレポートします。

コロナ禍が日常になり、今まで当たり前に続けてきた学校生活にも多くの変化がありました。さまざまな活動がオンライ ン化され、五感をリアルに発揮して「感じる」経験や場が激減しています。今回のワークショップでは、それぞれが普段学 校で感じる「きもち」や「かんじ」にフォーカスし、それをカタチにして伝える試みです。「おなかがすいた」「つまらない」「いやいや」「わくわく」「がやがや」「あったかい」、もしくは言葉にあらわせない感情など、自分の素直なきもちをカタチに立ち上げてみます。そしてそのきもちと関連する場所を学校の中に探してみます。窓際、靴箱、体育館、校庭の木陰…きもち のカタチの居場所を見つけたら、それを置いてタブレットで撮影し、皆で写真作品を鑑賞します。いつも何気なく見ているあの場所も、人によって感じ方が異なることを発見するかもしれません。アートの本領でもある「感覚に耳を澄ます」「カタチのないものにカタチを与える」こと。「当たり前の日常を改めて見つめ直す」こと。それらを体験することにより、多感な1 年生の時期に、それぞれの気づきをもたらすきっかけになることを期待しています。

初日の1時間は、BLANCOの活動拠点であるイタリアや、それぞれの作品紹介として写真で美術活動をプレゼンテー ション。ボッフェッリの「かんじ」を一本の線でカタチ”figure”にするリサーチ、また宮山の「場」や「時間」によって変化する 「作品」と「空間」の対話のリサーチを紹介し、今回のテーマと繋げました。聞き慣れないイタリア語に耳を傾けながら、 アートという「自分だけの表現」について考えてもらいました。その後は、各教室で素材のダンボールパーツに簡単な塗装 を施し、直観に従って思い思いにパーツを繋げ「きもち」や「かんじ」のカタチを模索しました。先生方がタブレットで各机を 巡回して作業風景を見せてくれます。

次の日は、先生の指導のもと、配布されたばかりのタブレットを使用して、きもちのカタチのおきばを探します。学校の細部を観察したり、普段の行動や活動場所を振り返ることによって見つけた場所にカタチを設置し、どのようなアングルで捉 えるか工夫します。

翌週の2回目のオンラインワークショップでプレゼンテーションの会を行いました。仕上がった写真を先生方がスライド化 し、皆で全員の作品を鑑賞。その後、10点ほどの作品を選択し、本人にその意図やきもちを紹介してもらいました。 ランドセル置き場、図書室の本の上、体育館の舞台のすみっこ、運動場へ繋がる渡り廊下。そこで聴こえる音や、きもちの揺れなどが表現され、とても興味深い作品が仕上がりました。心や身体で知覚する”きもち”や”かんじ”をカタチにしてみること。そして置き場所や、写真に切り取るアングルによって、関係性や意味が変わること。同じ時間、同じ空間に過ごす子供たちも、ひとりひとりの感じ方がまったく異なることを皆で共有し、会を終了しました。オンラインという限界がありながらも、皆のきもちが伝わる貴重な時間となりました。

TOKIO Labご提供の柔軟な素材によって、新たなコミュニケーションの形が見つかりました。

日時 | 2021年2月17日(木) 〜 2月24日(木) 
場所 | 西条市立丹原小学校 (愛媛県西条市丹原町池田1778−1)
参加人数 | 小学1年生 2クラス 合計38名
主催 | 西条市立丹原小学校1年生教師2名、BLANCO -ブランコ- 

「むずかしい こくばん」

「おしゃべり うんどうじょう」

「じゆうなたのしさ」

本プロジェクトは「東京アートポイント計画」の一環として実施しています。