2022.11.22

[事例2] 「ラッコルタ-創造素材ラボ- 」提供素材にふれた子どもたちの様子と育まれる力について

(ACF理事, ART-IST アトリエTutti 西郷絵海)

私は、子どもが何をつくるか自分で決める「アトリエTutti(トッティ)」を主宰し、子どもたちの造形活動に関わる仕事をして います。子どもたちは、創作をとおして、生きるために必要な力を自ら育んでいます。段ボール片に触れた子どもたちの様子を見て、感じたことや育まれる力について報告します。

切り込みの入った段ボール片 (くみくみチップ*) を子どもたちはどんどん組み合わせ、不思議な形を生み出し、生き物に見立てたり、ひたすら繋げて長さを比べたり、段ボール箱いっぱいのくみくみチップは、あっという間になくなっていきまし た。 特に小学校3、4年生くらいの子どもたちが素材に興味を持ち、夢中になっていました。 くみくみチップで創作をしながら、次のような子どもたちの様子がみられました。
*「くみくみチップ」は子どもたちと段ボール片をあつかいながら生まれた呼び名です。

・ひたすら繋げたり、自分なりの法則を決めて形を作ったり、同じことを繰り返し行うことで、気持ちを安定させていく。

・ほかの子どもの作品を見たり、組み合わせたりすることで、違った見え方を発見し、自分の視点を変えて新し い形に発展させていく。

・友達とのやりとりを心から楽しむ。

・くみくみチップで作った形を、既存の形(動物、乗り物など)に見立てて、想像を膨らませていく。

・取り組むまでに時間がかかる子どもが、すぐに取り組み、じっくり腰を据えて集中する。

なぜ、子どもたちを夢中にさせたのか? そこには次のようなくみくみチップの特徴が考えられます。

・手が汚れることや、ハサミを使うことが苦手な子にとって、手を汚さず、ハサミやノリなどの道具を使わないで組み合わ せることができるため、触感の好き嫌い、手先の器用さが創作に影響しない。

・組むという単純作業の連続で多様な表現ができ、他者と同じものが作れないところ。 とくに、上手い下手が気になる年頃の子には、他者を気にすることなく創作意欲がかきたてられる。

・単純作業の繰り返しで、複雑で難解な立体作品も作ることができ、短時間でも達成感を味わうことができる。

・完成した形や正解がないので、創作の経験に関係なく、楽しむことができる。

くみくみチップを手に取る様子は、「何かを作らなければ」というような義務感はなく、繋げてできる形を心から楽しむ姿 がありました。このような創作の中で得た経験〜作り上げた達成感、友達と一緒にやることの楽しさ、新たな発見など〜 は彼らの生きる力になります。

また、くみくみチップの特徴の1つでもある、手が汚れない、自分の経験に合わせて組み合わせて立体作品ができる、 繰り返しの作業で気持ちを安定させることができる素材は、創作画材としてだけでなく、保健室や療育の場、高齢者施設 などでも活用ができ、一定の効果があると感じています。

地元企業から譲っていただいた段ボール片は、多くの人に親しまれ、一人ひとりの想像力を高める創造素材に生まれ変わります。 これからも、積極的に活用していきたい取り組みです。

場所 | アトリエTutti (トゥッティ)
(〒183-0003 東京都府中市朝日町1丁目8−1)

参加人数 | 小学校1−5年生、50名