2026.6.1

【活動報告】チャーム・ケア × ACF「未来の記憶」プロジェクト

NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(以下、ACF)は、介護付有料老人ホームを運営する株式会社チャーム・ケア・コーポレーション(以下、チャーム・ケアまたはCCC)と連携し、アートを通じて人と人、記憶と未来をつなぐことを目的に、「未来の記憶」プロジェクトに取り組んでいます。

本プロジェクトは、ご入居者の五感を刺激するレクリエーション・プログラムを通じ、アートを介したコミュニケーションの可能性を探る試みとして、2024年より開始しました。

2025年9月にスタートした第二期では、ご入居者や介護スタッフの皆様との対話を大切にしながら、レクリエーションの後にも充実感が続く時間を目指し、プログラムにさらなる工夫を凝らしています。

今期の実施プログラム

   • ラッコルタ ― 創造素材ラボ ― 「私のお気に入り 〜みる・ふれる・おもう・記憶と対話〜」

地元企業から譲っていただいた多様な部材を手に取り、素材から発想する見立てや、ご自身の思い出と共に生まれる対話を楽しみながら、完成作品を撮影して記録します。

   • 8ミリフィルム上映会「懐かしい暮らしの映像」 

地域に眠る8mmフィルムの鑑賞会です。映像をきっかけに、当時の思い出を言葉にする対話の時間も設けています。

   • 音楽ライブ / ハーブを使ったワークショップ 

ACFのネットワークを活かし、多ジャンルのアーティストによる、五感を拡張しながら記憶を想起するプログラムを展開しています。 今期は、シンガーソングライターの加藤希さん、ジャズピアニストのMOMOさん、そして農とアートを繋ぐ活動を行う芦沢友紀子さん(ハーブワークショップ)をお迎えしています。

【実施レポート①】
ラッコルタ –創造素材ラボ–「私のお気に入り 〜みる・ふれる・おもう・記憶と対話〜」

ACFが主宰する「ラッコルタ –創造素材ラボ–」は、地域企業から提供された未使用部材や端材などを“創造素材”として再活用し、表現活動を通じて新たな価値を見出す取り組みです。イタリア語で「収穫・収集」を意味する“ラッコルタ”の名の通り、長年収集してきた多様な素材を活用しながら、ご入居者が五感を通して自分らしい表現を見出す場をつくっています。

2025年9月から12月にかけて、チャーム・ケアの施設(花小金井・経堂・光が丘)にて計3回のプログラムを実施しました。参加者はご入居者に加え、介護スタッフ、ご家族、学生インターン、ACFメンバーなど多様で、世代や立場を越えた交流の場となりました。

活動では、テーブルに並べられた多彩な創造素材を、参加者が直感的に手に取り、小箱や皿の上に自由に並べ、組み合わせながら作品を制作します。素材の質感や色、形から連想されるイメージや思い出をきっかけに会話が生まれ、制作の過程そのものが対話の時間となります。完成した作品はその場で撮影し、ミニフレームに入れてお渡しすることで、ご家族との語らいのきっかけとしても活用されています。

制作の初めには「何をしたらいいかわからない」「自分にはセンスがない」と遠慮される方も多く見られますが、素材に触れ始めると集中して手を動かし、それぞれ独自の作品を完成させていきます。同じ素材を用いても選び方や配置は一つとして同じものはなく、その人らしさが自然に表れてきます。素材を自ら選び取る行為そのものが、ご入居者一人ひとりの個性をより際立たせているように感じられました。

また、素材の質感や色彩が五感を刺激することで記憶が呼び起こされ、思い出のエピソードが語られたり、お気に入りが垣間見られる場面も多く見られました。特に、素材の色や形から季節感を感じ取れるようなアプローチは「記憶」にアクセスしやすく、自然と会話が広がっていく様子が印象的でした。

制作を通してご入居者の新たな一面が見えることは、日々接している介護スタッフにとっても大きな発見となっていると聞きます。学生たちとの交流も自然に生まれ、素材に触れる・選ぶ・並べるといった行為を共有することで、言葉を超えたコミュニケーションが育まれていきました。

今回の活動を通じて、素材を自ら選び表現する行為が、ご入居者一人ひとりの個性を引き出し、記憶や感情にアクセスするきっかけとなることが改めて確認されました。今後も「五感」を手がかりに、その人らしい表現に伴走するコミュニケーションを探究していきます。

ピックアップ作品

1:「外へ散りばめる」 
箱の中から外へ拡がる造形空間
固いものを柔らかい素材で包み込み、丁寧に詰め込む
そこから外の世界へ思いを散りばめる

2:「色と異素材で山というテーマを追求」
緑の素材を中心に、平面を構成
テーマに基づき、大胆な異素材で「山」という線を表現

2025年 9月 30日 チャーム花小金井
2025年12月16日 チャーム 光が丘

実施概要
◾️2025年 9月 30日 チャーム花小金井 
  参加者18名 (学生3名、人事部2名、ホーム長、介護スタッフ1名、ACF3名、CCC2名)
◾️2025年11月4日 チャームスイート経堂
  参加者10名 (介護スタッフ3名、来客見学1名、ACF3名、CCC2名)
◾️2025年12月16日 チャーム 光が丘
  参加者15名  (介護スタッフ2名、ACF3名、CCC2名、見学者2名)
◾️2025年2月3日 チャームスイート新井薬師 さくらの森 弐番館
  参加者11名 (介護スタッフ2名、ACF3名、CCC3名、見学者1名)

【実施レポート②】8mmフィルム上映会「懐かしい暮らしの映像」

ACFは、地域のお宅で見つかった8mmフィルムのホームムービーを上映する取り組みを、設立当初の2018年から続けています。

発掘されたホームムービーには、昭和30年代から50年代にかけての家族の日常が映し出されています。ほとんどのフィルムには音がなく、時にピントがぼけたり手ブレがあったりします。それでも、愛する家族へ向けられたまなざしには、何ものにも代えがたい幸せな瞬間がしっかりと刻まれています。そこにあるのは、大手メディアが記録することのなかった、かけがえのない暮らしの風景です。

今回、チャーム・ケアの各施設でのレクリエーションとして、東京都府中市で発掘した8mmフィルムの中から、

・昭和30年代の正月風景、海水浴、赤ちゃんの誕生
・昭和40〜50年代のバーベキュー、運動会、駅前商店街

を上映しています。

2026年1月27日チャームプレミア田園調布

小さな女の子が大人の女性へと成長していく姿を、モノクロからカラーへと移り変わるフィルムの変化とともにたどることができる映像です。それは、ご入居者の多くが20代を迎え、子育てや仕事に懸命だった時代とも重なります。司会が当時の世相を交えながら解説すると、ご入居者皆様は深く頷きながら、懐かしむように見入っておられます。

私たちはご入居者の反応を受け止めながら、少しずつスタイルを工夫してきました。

・当時の思い出を言葉にしていただく時間
・古い機械を使ってご自身でフィルムを見るコーナー
・古新聞を手に取って読むコーナー

など、見るだけでなく、触れ、語り、身体を使って参加できる場づくりを大切にしています。

2026年1月27日チャームプレミア田園調布

に印象的なのは、思い出を語る時間です。
施設ごとに雰囲気はさまざまです。活気にあふれ、次々と発言が飛び交うこともあれば、静かにじっくりと映像に向き合うこともあります。同じ映像であっても、そこに生まれる時間は毎回まったく違うものになります。

しかし共通しているのは、どの施設のご入居者も上映会を楽しみにしてくださる方が多いことです。「上映会」と聞いて映画作品を想像される方もいらっしゃいますが、上映が始まると皆様はすぐに引き込まれます。そしてひとたび語り始めると、何十年も前の出来事が、驚くほど細やかに、いきいきとよみがえります。その豊かな人生の物語に、私たちは何度も心を打たれます。

「良い思い出を思い出させてくれてありがとう」

上映後、そう声をかけてくださる方も少なくありません。

上映中は静かに鑑賞されていた方が、会場を出る際に「いろんなことを思い出して楽しかった」と笑顔で話してくださることもあります。

映像に映る服装や食卓の風景に反応される方もいらっしゃいます。

「昔の子どもはみんなこんな服を着ていた」
「着物の着方が違うね」
「あの時代はふくよかな子が多かった。母親がたくさんご飯を食べさせていたのよ」

など、当時の暮らしを伝える貴重なご発言をいただいています。

またユニークなご発言として、
「昭和30〜50年なんて、つい最近のことだよ」
というお言葉もありました。すでに成人として結婚、出産、子育て、仕事に追われていた時代を振り返る率直な実感が、そこには込められています。

ホームムービー映像は、単なる記録ではありません。そこから生まれる言葉が、新たな交流を生み出します。介護スタッフの方が、ご入居者のこれまで知らなかった一面に出会うこともあります。

小さな8mmフィルムに残された愛情あふれる風景は、世代を越えて心を動かします。これからも、この上映会がご入居者と介護スタッフの皆様の対話のきっかけとなり、あたたかな時間を育んでいけるよう、さらに充実させていきたいと考えています。

2026年1月27日チャームプレミア田園調布

実施概要
◾️2025年 11月 25日 チャームスイート品川大井
参加者16名 (介護スタッフ2名、ACF3名、CCC2名)
◾️2025年12月9日 チャームスイート豊洲
参加者11名 (介護スタッフ2名、ACF3名、CCC2名)
◾️2026年 1月 27日 チャームプレミア田園調布
参加者16名 (介護スタッフ3名、ACF4名、CCC2名)
◾️2026年2月10日 チャームスイート石神井台
参加者31名 (介護スタッフ2名、ACF3名、CCC1名)

【実施レポート③】「郷愁を誘う秋の歌」(加藤希)

ご入居者に人気の音楽プログラム。「未来の記憶」プロジェクトでは、五感を刺激するプログラムをお届けしています。

シンガーソングライターの加藤希さんの歌による季節の童謡唱歌を竹林の美しい緑を背景に、ご入居者と一緒に楽しみました。

歌詞カードをみて一緒に歌ったり、曲にまつわるクイズに答えたり、加藤さんとピアニストの城間さんのお子さんの手作りの旗を曲に合わせてふりなが歌うなど、耳だけでなく目も頭も体も使った盛りだくさんのアートレクの時間となりました。ピアノに合わせて弾いているように指を動かし、楽しまれている方もいらっしゃいました。

後日、ホーム長がご入居者に感想を聞いて下さったところ、「楽しかった」「素敵だった」「歌だけでなく、おしゃべりもして下さった」「時間が経つのが早かった。もう少し時間があっても良いのではないか。」「しっとり聴きたい派だけど、身体が自然に動いた」など 多くの方が楽しく時間を過ごされた感想を寄せてくださいました。

一緒に歌ったり、クイズを考えたり、介護スタッフやご家族、多世代で一緒に楽しむ時間となりました。

◾️2025年9月23日 チャーム狛江 
参加者32名(介護スタッフ3名、ACF2名、CCC2名)

【実施レポート④】「お昼のジャズカフェ〜ジャズピアニストMOMOと巡るジャズの名曲と民謡〜

 ジャズピアニストのMOMOさんの演奏は映画音楽からジャズ、昭和歌謡、民謡と多彩で、参加されたご入居者は歌ったり、リズムに合わせて体を動かすなど、自然にそれぞれのスタイルで楽しまれていました。

今回はMOMOさんが事前に会場を下見に行った時に、ラッコルタの素材でご入居者と楽器を作りました。

その楽器をリズムよく鳴らしながら歌うプログラムもあり、聴覚だけでなく視覚や触覚も使って全身で音楽を楽しまれていました。

楽器作りからこの日を楽しみにされていた方、リハーサルの音を聞いて会場にいらした方、認知機能が低下されている方が英語の歌を口ずさむなど、ご入居者それぞれが「音」から「記憶」が触発され、「楽しかった、また来てね」の言葉に、この時間が新しい「記憶」となり、明日への希望となったと実感しました。

◾️2025年11月18日 チャーム清澄白河
参加者40名(介護スタッフ3名、ACF2名、CCC2名)